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神様とお母さん
私は多感な中学高校時代キリスト教の学校に通いました。
学校では毎朝毎夕礼拝の時間がありました。
キリスト教のお祈りの中では、自分の過ちや迷いを告白して神様に許しを乞います。
キリストを抱き抱えるマリヤ様の姿を見つめながらその姿を幼い頃に亡くなった母と無意識に重ねた私は、次第に神様に祈りながら母に許しを乞うようになりました。
私は、母を神様と重ねることで母にずっとそばにいてもらうのと引き換えに、生身の人間である母親の思い出や感触を日に日に失っていったのでした。
それから月日がたち、私は結婚して男の子を産みました。
その子が1歳を過ぎてしばらくしたある日、 ふと気づくと私が息子を抱っこしているのではなく、息子が私を抱っこしてくれていることに気づきました。
息子に抱っこされながら、一瞬にして私は私が幼い頃の自分になって母親に抱っこされている錯覚に陥りました。 それは何十年ぶりの特別な記憶、特別な暖かさでした。
息子に抱っこされるたび、私は神様になってしまった母に許しを乞うことから解放されていきました。
長い時を経て、息子を通じ、私は再び生身の母親を手に入れたのでした。

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抱っこ
抱っこって素晴らしい
抱っこって満たされる
誰かを抱っこするたびに
どんどん、どんどん、満ちていく