てもと(インディゴシリーズー青と白に宿る記憶)

何気ない日本の田舎暮らしの中にある花鳥風月をモチーフに、人の手元にそっと在る風景をイメージして作っています。

赤土に白化粧を施した素地に、色化粧で青をのせ、竹ひごでアウトラインを掻き出す――

その静かな工程の中に、私の記憶と土地の色が沁み込んでいます。

長崎で育った私は、有田焼や波佐見焼の磁器に自然と親しみました。

そして、港町に漂う異国の空気とともに、オランダから渡ってきたデルフト焼きの陶器にも触れてきました。

幼いころから見慣れてきた「青と白」の器たちは、私の原風景の一部です。

私は、現在 茨城県つくば市の木々や田園を望む丘の上の古い家にくらし、笠間や益子で使われるあたたかみのある土や白化粧に出会いました。

「てもと」シリーズは、そんな土地の素材に、私の中にある「青と白」の記憶を重ねて制作したものです。

染付磁器のような華やかさや精緻さではなく、土と手の温もりがにじむような青。

それは懐かしくも新しい、私自身の「青と白」の再構築です。